出産

概してアメリカの出産に関する施設は充実しており、安心して出産できる環境にあります。ここでは、日本の出産に関する情報ではなかなか現実の話が想像できない苦い経験をもとに、なるべくわか りやすく説明します。

1. 産婦人科の見つけ方

まず一番よい方法は、近所の評判を聞いてみること。アメリカの開業医は、1人から何十人かのグループで 診療所を持っており、通常の診察などすべて診療所(病院とは違う)で行います。出産当日はぎりぎりまで自宅で待機して病院に行くのが通常です。自宅に近い 病院を見つけ、そこに所属している医師の紹介を受けることが理想的です。また、アメリカでは日本よりも自宅出産などがしやすい環境にあり、それにトライされるのもいいかもしれません。セントルイス中心部から北西に30分ほどドライブするとBirth and Wellness Center という助産院があり、病院とはまた違った温かみのある対応をしてくれ、非常に親切です。

2. 保険

ワシントン大学の保険で出産はカバーされますので、必ず配偶者の方も保険に加入するように注意してください。出産後は1ヵ月以内に子供も追加で保険に加入する必要があります。

3. 検診

定期検診は、妊娠9ヶ月までは月1回、臨月に入ると1週間に1度あり、産後の1ヶ月検診で異常がなければ終了となります。 検診の内容は、子供の心音チェック、尿検査、体重測定、血圧検査、子宮腔測定を毎月のように検査します。日本である程度検査を受けた方は、母子手帳の英訳、特別医師に伝えたいことのある方は、日本の医師のレターを持参することをお勧めします。

4. 病院への登録と出産直前

妊娠8ヶ月頃、病院に出産予定日を登録します。これは、予定日に寝室を確保するためのもので、この時点ではキャッシュは手付金として約2,000ドル要求される病院もあります。また、この時期に実施される病院見学への参加を是非お勧めします。 ラマーズクラス(母子学級)などの各種プログラムも定期的にあります。また、予定日が近くなったら、以下のものを用意されるといいでしょう。(病院の緊急連絡先の確認、カメラ、ビデオ、スリッパ、メモ帳、洗面用具、寝間着、ガウン、タオル、赤ちゃんの下着等) 

出産当日は旦那さんの立ち会いが原則です。実際には男が出来ることは、奥さんの手を握ることぐらいで しょうが、誕生直後に元気に泣き叫ぶ我が子を取り上げ、へその緒を切ると言う儀式、父親としての自覚を芽生えさせるためには多少は役立つかもしれません。 また出産直前までには、小児科を選んでおく必要があります。病院によっては、入院中に小児科医が診察のために来てくれますし、子供の血液検査の結果は指定した小児科医に送られます。入院期間は、通常自然分娩は出産から48時間、帝王切開は1週間です。

5. 陣痛が始まったら(自然分娩の場合)

陣痛が約20分間隔で規則的になったら、病院で待機してもらうために産婦人科に電話し、許可が出たら病院に向かいます。電話する際には、1) 陣痛が始まった時間、2) 陣痛の間隔、3) おしるしの有無とその量、4) 破水の有無を聞かれます。病院に着くと、入り口で車椅子が与えられ、陣痛室 (Labor Room) へ行くように指示されます。

陣痛室に入ると、看護婦が血圧測定、採血を行い、点滴と心音波測定装置を装着します。その後吸う十分お きに子宮の確認がなされます。「インチ」が一般的なアメリカにおいて、この時ばかりは「センチ」が使われます。陣痛がキツイ場合には、要求すれば痛み止め の注射を打ってもらえます。10センチになると、ようやく産婦人科医が登場し、母体が分娩代に固定されます。最近は陣痛から分娩まで一括して同じ部屋でな されることが多いようです。この部屋が一流ホテル並みにすばらしく、テレビまで装置されています。そしてpush(いきんで)とhold(やめて)を産婦 人科医、看護婦、父親が言い合い、元気な産声が聞こえたら、待ちに待った赤ちゃんの誕生です。最後に父親がへその緒を切って皆で記念撮影をして終了となり ます。

赤ちゃんをタオルで拭き、体重測定をしている間に、旦那さんは出生届、各種書類へのサインを要求されます。戸籍のないアメリカでは、生まれたその場で命名し、それを医師が証明するのが通常ですから、誕生前に性別を聞いていない場合は、男女の名前を用意しておきましょう。

その他特別のこととしては、「割礼」です。ここアメリカではほぼ95%の男性が経験しており、その必要を聞いてきます。これは、生後1週間以内であれば、全身麻酔の必要がなく、出血も最小限で済むからです。 医学的には割礼の必要性は少ないようですが、アメリカ人の場合はコスメティックな理由のようです。 また、母乳かミルクで育てるのかも質問されるでしょう。 

6. 生後

出産の2日後には母子とも異常がなければ退院です。新生児はすぐに小児科 (Pediatrician) を探し、定期的に健診や予防接種を受けることになります。出産した病院がBarnes-JewishやSt.John's Mercyのような大病院であれば、そこの小児科を利用することもできますが、待ち時間も長くなくアクセスの良い、個人小児科を利用される方が便利です。在校生のお子さんが良く行く小児科は以下の通り。

Holmes, Nancy MD - Central Pediatrics 
□ 8888 Ladue Rd, #130, St Louis, MO
□ (314) 862-4002

担 当医のNancy E. Holmesは非常に分かりやすい英語で丁寧に説明してくれます。通常の病気の診断に加えて、定期健康診断、予防接種も対応可。アポイントはあった方が良 いですが、緊急の場合は直ぐに診てくれるので安心です。母親の検診としては、出産前に行っていた産婦人科医にて1ヶ月後の定期診察や4ヶ月後の膣がん検診 等を受けます。

7. 日本国籍の留保

アメリカで生まれた子供の日本国籍を留保する場合、生後3ヶ月以内に最寄りのシカゴ総領事館に報告します。 必要な書類は、 
□ 出生届書・2通(領事館へ問い合わせて事前に入手)
□ 出生証明書・2通(病院のDept. of Birth Certificateにその取得申し込み用紙を入手、以下のところに申請:St. Louis County Dept. of Health, 111 South Meramec Clayton, MO 63105)

総領事館に提出された書類は、外務省を経由して両親の本籍地当てに送付されます。約2ヶ月後には戸籍が登録されるので、留守宅などに頼んで謄本を取り寄せましょう。これは日本のパスポート取得の際に有効です。二重国籍のためビザの申請は必要ありませんが、日本に帰国の際には必要となります。また、アメリカのパスポート取得は、郵便局に行けば比較的簡単に取得できます。

8. 二重国籍について

アメリカは生地主義を採用しているので、赤ちゃんは二重国籍となります。22歳のときにどちらかの国籍を取得しなければなりません。親にとっては、グリーンカードを取得するチャンスが拡大します。 

9. 日本より持参すると役立つ本

□ 「アメリカでの暮らし方」 中野英子著(サイマル出版会) 
□ 「初めての妊娠とお産」 塩見勉参著(西東社)

10. 妊娠用品・赤ちゃん用品

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